The Beatles「White Album」いつビートルズは仲違いしたのか。なぜ解散したのか。-387- 【Martha My Dear】
【 Martha My Dear 】 -2-
リンゴはドラムを叩いているのか
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【資料】
1968年10月4日
第1回録音
8トラックのマスターを聞いてみても確かなところはわからないのだが、
Martha My Dearも管楽器のオーバー・ダブを除けば
ポール・マッカートニーのワンマン・レコーディングだった可能性がある
この日、ストリングスのオーバー・ダブをはさんで
この曲の各パートが録音された。
手始めはボーカル・ラインとピアノ、ドラムスのベーシック・トラック。
9時~12時には14人のミュージシャンがマーサのオーバー・ダブを録音した。
続いて夜中の12時から朝の4時半までの間に、ポールが既録音の
ボーカル・トラックを消して新しいボーカルを入れると同時に手拍子を加えた
(The Complete Beatles Recording Sessions P.197)
:
この資料を書いたマーク・ルイソンはマスター・テープを聞いた。
誰がドラムを叩いたのか確かなところはわからなかった。
記載された記録として残っていなかったということだろう。
聞いた印象としてポール1人の多重録音だろうとしている。
録音初日であるこの日にストリングスのオーバー・ダブの録音もされた。
前もってストリングスの用意がされていた。
ベーシック・リズム・トラックがまず録音された。
それはポールのガイド・ボーカルとピアノ、他、ドラムスだった。
ストリングスのオーバー・ダブがされた後に夜中から朝方にかけて
ポールがガイド・ボーカルを消してリード・ボーカルを録音した。
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【資料】
ポールはガイド・ボーカルとピアノを弾いた。
ドラムスはオーバー・ダブされた。
唯一の完成テイクに、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
トランペット、トロンボーン、フレンチホルン、チューバ、
フリューゲルホーンがオーバー・ダブされた。
その後にポールがボーカルを録り直して間奏に手拍子を入れた。
(That Magic Feeling,The Beatles' Recorded Legacy P.216)
:
この資料は前出のマーク・ルイソンの資料よりも新しい資料だが
やはりポールのガイド・ボーカル、ピアノ、ドラムスと書かれている。
リンゴがドラムスを叩いたとは書かれていない。
でもそんなことが本当にあるだろうか。
ポールがドラムスを叩いたことが原因でリンゴはバンドを脱退した。
このことはポールもはっきりと自覚している。
ポールにリンゴに対する悪意があったわけではない。
ポールはリンゴの気持ちが気にならなかっただけだ。
ポールは録音をしている時にバンドのメンバーの気持ちを
考えずないがしろにするところがある。
ポールはRocky RaccoonからDear Prudenceまでの続いて4曲を
本番の演奏でドラムを叩いた。
この時にリンゴはバンドを脱退した。
復帰する時にメンバーはドラムを花で飾って迎えている。
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【資料】
ポールは自分でドラムを叩いて難なくBack In The USSRを仕上げたが
リンゴに辞められては困ると思い日を置いて彼を説得した。
(ザ・ビートルズ・マテリアル vol.1 P.111)
:
ポールはバンドに復帰するようにとリンゴを説得した。
この説得にはもうドラムは叩かないという内容があったはずだ。
このリンゴの脱退劇でポールは理解した。自分がドラムを叩くと
リンゴがバンドを辞める、バンドが解体するとやっとわかった。
だからこの後のセッションでポールはドラムを叩いていないはずだ。
Martha My Dearでもポールがドラムを叩くのはありえない。
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【資料】
ポール以外のビートルズは参加していない。
(The Beatles Sound Book Vol.3-2 Official Numbers P.34)
:
ポールの1人多重録音としている。
他の多くの資料でもそう書かれていた。
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【資料】
この曲のマスター・レコーディングをしたのはポールだけで
ほかの3人は参加していない。
最初にピアノ、ドラム、ガイド・ボーカルによるベーシック・トラックを
録音する。
午前0時から4時30分まで、ポールはMartha Wy Dearに
リード・ボーカルと手拍子をオーバー・ダビングした。
(The Complete Beatles Chronicle 1965-1970 P.368)
:
これはマーク・ルイソンの書いた資料。
同様にポールの1人多重録音としている。
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【資料】
ポール1人で録音した
たしかにピアノ、ベース、ギターすべてポールのタッチのようだ。
だが、ドラムが上手すぎる。
リンゴのようなフィルが入っているし、
それこそこんなにドラム上手かったっけである。
フィルのニュアンスなんぞは抜群
間奏が終わり、フィルをして今度は倍でリズムを刻む。
その倍のリズムの終わりに聴かせるフィルが圧巻
これはリンゴそのものではないか。
この曲のドラムはリンゴだと思う人は多くいると思う
(全曲解明!!ビートルズサウンズ大研究(下) P.78)
:
この資料はマーク・ルイソンの本がでてからのものだ。
つまりこの曲のドラムはポールだと信じられていた時の資料だ。
この資料の作者はドラムがポールということに異議をとなえている。
ドラムを実際に聞いてみた結果、ドラムはポールではなくリンゴだと主張している。
フィルが全くリンゴの演奏するフィルそのものだと言っている。
演奏を聞いての判断だ。
世界中のファンが信じていた資料でドラムはポールと断定されていた時期に
このドラムスはリンゴだと1人主張したこの筆者は素晴らしいと思う。
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【資料】
ポール・マッカートニー
ピアノ、ボーカル
レノン
ベース
ハリスン
リード・ギター
スター
ドラムス
(ビートルソングス P.139)
:
マーク・ルイソンの資料が出る以前の時期の本ではリンゴがドラムスと
明記されている本もある。
ただしこの資料ではベースをジョンとしているがこれは間違っている。
マーク・ルイソンの資料の前には様々な情報が錯綜していたのだろう。
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【資料】
ベーシック・リズム・トラックの演奏
ガイド・ボーカルとピアノはポール。
ドラムはリンゴ
ギターはジョージ
(White Album(スーパー・デラックス・エディション 2018) CD付属解説書)
:
最新の資料ではドラムはリンゴとなっている。
この資料の内容を採用します。
リンゴが復帰後ポールはドラムを叩いていない。
この曲のドラムもリンゴだ。
White Albumのセッションで問題点の一つであったポールのドラム演奏は
封印されている。完成間近のこの時期バンドは穏やかに録音をしている。