The Beatles「White Album」いつビートルズは仲違いしたのか。なぜ解散したのか。-365- 【Happiness Is A Warm Gun】
【 Happiness Is A Warm Gun 】 -18-
なぜオノ・ヨーコへの歌だと言い切れるのか。
○
【資料】
CD版 Anthology3
1枚目2曲目
もっとも初期のヴァージョンだ
I need a fixのタイトルで紹介したほうが
ふさわしいかもしれない
3つの曲がひとつになってできたものだ
ここではそのうち、最後以外のふたつのパートを聴くことができる
(Anthology 3 CD付属解説書 P.8)
:
この曲にはデモがある。
そのデモはCD版 Anthology3、1-2曲目で聞ける。
「ホワイト・アルバム」(3CDデラックス・エディション)の
3枚目、7曲目でも同じものが聞ける。
○
【資料】
1968年5月
Happiness Is A Warm Gun
Mean Mr. Mustard
Polythene Pam
Glass Onion
Kenwood(ケンウッド)で録音された。
ジョン一人によるデモだ。
(That Magic Feeling,The Beatles' Recorded Legacy P.169)
:
このデモはジョンの自宅、Kenwood(ケンウッド)で録音されている。
Kenwood で録音されているから厳密にはKenwood Demos だが
時期が同じなのでEsher Demos(イーシャー・デモ)に含められている。
「ホワイト・アルバム」(3CDデラックス・エディション)でもそうなっている
この資料では日付は1968年5月としているがこれはEsher Demosの日付であり、
この曲のデモの日付は厳密には不明なのだろう。この前後ではあるのだろう。
ジョン一人での録音だ。
他、計4曲が録音されている。
○
【資料】
ジョンだけで他のメンバーは参加していない。
「I need a fix」「Mother Superior」が録音されている。
ジョンのボーカルとギターだけでオーバー・ダブはしていない
CD版 Anthology3に収録されている。
(That Magic Feeling,The Beatles' Recorded Legacy P.170)
:
ジョン一人での録音。
「I need a fix」と「Mother Superior」の部分のみのデモだ。
ジョンのボーカルとギターだけでジョン一人の弾き語り。
オーバー・ダブもない。
○
【資料】
三つのパートからなるロック小組曲である。
そのうちのI need a fixのパートを軸にしたもので、
完成版にはない「Yoko Ono o'no.Yoko Ono o'yes」
という一節も含まれている
(The Beatles Remastered CD Guide P.145)
:
完成版は3曲を組み合わせた組曲である。
そのうちのI need a fixとMother Superiorの部分のみのデモだ。
その他に完成版にはない部分が演奏されている。
それが「Yoko Ono o'no.Yoko Ono o'yes」の部分だ。
ジョンが熱に浮かされたように歌っている。
オノ・ヨーコに恋する心の思いを歌ったものだ。
歌詞はオノ・ヨーコのオノとOh noをかけたもの。
その後にo'yesと歌っている。
ジョンがオノ・ヨーコを愛している気持ちが感じられる。
それは切実でとてもプライベートなものだ。
周囲からも社会からも隔絶して存在している。
ジョン一人で成立している真剣なオノ・ヨーコへの愛情だ。
この歌はオノ・ヨーコへの恋の歌だ。
全編オノ・ヨーコへの恋と彼女のイメージと彼女への呼び掛けを綴っている。
○
【資料】
ジョンの場合はインドから帰国後にヨーコと急接近して
me & Yoko-the worldという図式に変化したことがうかがえる。
Happiness Is A Warm Gunの「お前を抱けば・・・誰も俺のことを
傷つけることなんかできやしない」という言葉
(レコード・コレクターズ 2018年 12月 P.74)
:
ジョンはオノ・ヨーコを手に入れてから世界観が変わった。
それまでジョンは一人で戦っていた。
それがジョン一人から「me & Yoko」(ジョン & ヨーコ)となった。この曲の
「お前を抱けば・・・誰も俺のことを傷つけることなんかできやしない」
という言葉で明確にジョン自身が語っている。
ジョンはオノ・ヨーコによって絶対に確かなものを手に入れた。
それは一般の人にとっては母親の存在だ。
母親がいるから人(子供)は自信を持ち安心を得られて自立できる。
ジョンはそれをもらい損ねた。ジョンは原因不明な不安の中で
子供の時から一緒に世界と戦ってくれる人を探していた。
バンドもその一環だった。ジョンにとってロックン・ロールは衝撃だった。
でもそれ以上に仲間作りはもっと大事だった。
仲間の中でも一番は当然ポールだった。
でも本当にジョンが求めていたのは一緒にいてくれる母親だった。
ポールは最高の仲間にはなったがそれでも母親がわりにはなれない。
ポールはかなり近くまで行った。肉薄した。大したものだと思います。
そこにジョンの前にオノ・ヨーコというもっと母親に近いものが現れた。
ジョンはこの時、自覚している。自分が母親を求めて苦しかったことを。
オノ・ヨーコに母親を求めていることを。
母親を手に入れたジョンはこれまでのジョンとは別人だ。
○
【年表】
1968年5月4日
ジョンが実父フレッド・レノンと和解
イーシャのホテルの皿洗いの仕事をやめる。
1968年5月16日
ジョンがシンシアに離婚したいと電報を打つ
1968年5月19日
ジョンとオノ・ヨーコ、初めて結ばれる。
1968年5月25日~29日
Esher Demos(イーシャー・デモ)
Happiness Is A Warm Gunのデモ
:
5月4日にジョンが実父と和解。
5月16日にジョンが離婚を伝える。
ジョンは父との再会、シンシアとの離婚があり精神的に不安定だった。
マハリシの講義も不安を消し去ってはくれなかった。
5月19日にオノ・ヨーコと結ばれる。
ジョンはここで母親を手に入れる。
5月末以降にHappiness Is A Warm Gunのデモ
オノ・ヨーコへの恋情を歌う。
母親を手に入れてその恋情と喜びを歌う。
ジョンの人格が一転して別人格になる瞬間だ。