The Beatles「White Album」いつビートルズは仲違いしたのか。なぜ解散したのか。-150- 【Cry Baby Cry】
【 Cry Baby Cry 】 -10-
録音2日目の第1テイクと正規ヴァージョンの違いについて
○
【資料】
1968年7月16日
録音2日目
10テイク録音
第10テイク
ベーシック・トラック
ジョンのボーカル
ベース
オルガン
ドラムス
アコースティック・ギター
リダクションして12テイクとし
夜にオーバーダブ
ハーモニウム(ジョージ・マーティン)
ピアノ(ジョン)
(The Complete Beatles Recording Sessions P.177)
:
リハーサルの翌日の録音2日目にベーシック・トラックを録音した。
ジョンはピアノとギターを弾いている。
4人で一緒に同時演奏したかどうかは不明だ。
だがメンバーは4人とも揃っている。各々の楽器を演奏して録音した。
だから少なくとも一緒には録音している。
そして夜にオーバー・ダビングをした。
10テイク録音し採用されたのは第10テイクだ。
このテイクが正規盤のテイクになっている。
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【資料】
第1テイクがCD版 Anthology3に収録されている。
(Complete Beatles Audio Guide P.133)
:
この日の最初のテイク、第1テイクがCD版 Anthology3で聞ける。
前日のリハーサルで他のアレンジは既に検討されて不採用になっている。
この第1テイクはEsher Demos(イーシャー・デモ)そのままのアレンジだ。
そしてこのテイクはとても興味深い。
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【資料】
1968年7月16日の夕方から夜にかけて行われたセッションが終わる頃にほぼできあがった。
CD版 Anthology3で聴くことができるのはその5時間前に録られたテイク1で
オーバー・ダビングなしのスタジオ・ライブの形で演奏されている。
この曲に関しては迷うことなく作業が進んでいた
(CD版 Anthology3 CD付属解説書 P.11)
:
この第1テイクは4人で一緒に演奏している。
オーバー・ダビングもされていない。4人のライブ演奏である。
ジョンのボーカルとギター、ポールのベース、ジョージのギター、リンゴのドラム
という構成だ。これがすごくいい。
White Album収録の正規ヴァージョンは不気味さを内包しているが
この第1テイクには不気味さはない。清清しいアコースティック・ヴァージョン
それはなぜなのか。
正規ヴァージョンには何が加わったのか。
それはまず、ジョージ・マーティンが弾いたハーモニウム
そして3番に入っているSEと左に消えていくボーカルと正面に広がるピアノ
この4つが曲のイメージを暗くしている。
でもそれはCD化された時に標準仕様となったステレオ盤の話。
ビートルズが作成したのはモノラル・ヴァージョン。
ジョンが作成したのはモノラル盤。モノラル盤こそがジョンの描いた音。
モノラルを聞くと不気味なイメージがなくなる。
左に消えていくボーカルと広がるピアノがないからだろう。
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【資料】
こんなに簡単な曲がそんなにたくさんのリハーサルをしたなんて妙だ。
現に、7月16日の第1テイクはジョンのKenwood Demos(ケンウッド・デモ)と
あまり変わらない。
(That Magic Feeling,The Beatles' Recorded Legacy P.189)
:
この日の第1テイクと似ているのはEsher DemosでありKenwood Demosではない。
Esher Demosと同じアレンジで第1テイクを録音。
第10テイクを録音した後に、録音初日のリハーサル・テイクで試したマイナー調で
サイケデリックなアレンジを追加した。
もともとのジョンのアイデアはSgt. Pepper'sと繋がる幻想的で空想的な
アレンジだった。ジョンはその最初のアイデアを実行したのだろう。